名称: カクレケンミジンコ(Acartia Nihil)
分類: 動物界 » 無気配動物亜界 » 節足動物門 » 甲殻亜門 » 多甲殻上綱 » 六幼生綱 » カイアシ亜綱 » 新カイアシ亜綱 » 前脚上目 » カラヌス目 » セントロパジェス上科 » アカルチア属 » Acartia Nihil
危険度: XX
分布: 海洋のうち、主に温帯の表層で観察されます。
外見: 概ね紡錘形の体形をしています。体長は成体でおよそ0.7mm~1.0mmであり、標準的なカイアシ類と同程度です。体は前体部と後体部に大別され、さらに頭部、胸部、腹部、尾部に分けられます。外見上の体節数は頭部1節、胸部6節、腹部4節の計11節です。
頭部には第1触角、第2触角、大顎、第1小顎、第2小顎、顎脚が見られ、このうち第1触角は体長の半分程度の長さを持ちます。これはカラヌス目の特徴と一致します。この触角は感覚器として機能するようです。また、複数の刺毛が生えている様子が観察できます。しかし第2触角は第1触角に比べて著しく小型であり、判別は困難です。第2触角は遊泳や餌をかき集めるために使用されます。第2触角によってかき集められた餌は大顎によって咀嚼されますが、本種は成体になると大顎が退化して摂食を行わなくなります。第1・第2小顎は餌を把持し、遊泳を行う機能を持ちます。また顎脚はこれらを補助するために使用されるようです。吻端は持たず、これはアカルチア科の特徴と一致します。また、第1触角の間に1つの眼を持ちます。
胸部には第1~5胸脚を持ちます。また、第1胸節の背面に心臓を持ちますが、大動脈を欠きます。また雌では第6胸節と第1腹節が完全に融合して生殖複合節を形成しており、ここに1つの卵嚢を付けます。また、腹肢は持ちません。また、尾部先端の肛門節には尾叉が付きます。
生態: 主に温帯の海洋表層を浮遊します。他のカイアシ類と同様、卵からの孵化後ノープリウス幼生、コペポディット幼体を経て成体になります。ノープリウス幼生およびコペポディット幼体では、主に表層の植物プランクトンや、初期分解段階にある魚類の死骸の微細な欠片等を摂食している様子が観察されていますが、それに限らないことが複数の試験の結果から判明しています。しかし、具体的な捕食対象は未発見であり、何らかの不可視生物を餌としている可能性も指摘されています。なお、成体は大顎が退化するため食事を行いません。交尾の際は、雄の第5胸脚が雌を把握し、雌の生殖孔へ精包を付けます。また本種は無気配生物であり、魚類等の上位捕食者から捕食されることが少ないため繁殖が容易ですが、鯨類等の比較的無差別な捕食を行う種に対しては無意味です。この性質のため本種は広範囲に拡散しており、通常であれば生物密度が低い海域にも生息することが確認されています。特に生物密度の低い外洋において通常考えられるよりも多くの海棲生物が見られた場合、本種の存在が疑われます。このような海域は現在のところ13箇所が特定されており、うち日本近海の2箇所で調査が行われました。
また本種の特徴的な生態として、動物プランクトンとしては唯一赤潮を引き起こすことが知られています。前述の通り本種は無気配による繁殖容易性を持ちますが、鯨類に代表される無差別捕食種の少ない海域においてはしばしば過剰繁殖による赤潮を起こします。この赤潮は一般的なものと同じように海中酸素の過剰消費や魚の鰓への付着などによる大量死を誘発しますが、同時に本種が海面を覆うことによる海域一帯の無気配化にも繋がります。そのため、大量死後にその死骸が分解・漂流して影響範囲を離脱するまで発見されない場合がほとんどです。またこのようにして発生した死骸の微細な欠片は本種の幼生・幼体の餌となり、更なる繁殖を招きますが、本種は成体への成長時に摂食器官が退化するため、赤潮を構成する群れが成長しきった後は寿命により減少傾向に転じます。新規に産卵された卵等は、孵化する頃には海流により拡散している場合がほとんどです。
捕獲方法: 生息海域で目合い0.33mmのプランクトンネットを使用することで容易に捕獲が可能です。
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