概要
統一言語内径バベル(以下バベルと呼称)は、ある海淵から進入可能な異空間である。
内部は複数のビオトープと中央の小規模な塔(蒐集塔と呼称される)とで構成された広大な空間であり、酸素や気圧、気温、湿度、植生等がビオトープ毎に適した水準に保たれている。
実際にビオトープ内部には様々な生物が生息しているが、内部で確認された不可視生物は現在C-2720-nightのみである。
発見は沈まぬ夜支部。C-2039-nightを用いた調査を進行中。
生物傾向
犬や猫、牛や豚等の、主に地球上に存在している生物の中で人間との関わりの深い種が生息しており、中には絶滅種及び絶滅危惧種とされている生物等も存在している。
尚、現在確認されている不可視生物はC-2720-nightのみ。
上記の生物は愛玩動物とされていたり家畜化されていたりと、C-2720-nightの模倣の為に飼育されている存在であるとされ、定期的に外部から他の生物をC-2720-nightが招き入れる事もある為、本来生息していた生物ではないと推測されており、C-2720-nightとの意思疎通と共にバベル自体とC-2720-nightとの因果関係の調査が進められている。
特記事項
バベルの内部には様々な生物と同時に意思疎通が可能な存在である悪魔及びC-2720-nightが存在している為、彼等自身の危険性を鑑み、彼等を発見した場合は可及的速やかに友好的な姿勢で意思疎通を試みる事を強く推奨する。
彼等の知識や技術によって造られているビオトープや塔についての情報を収集する事も、その手法を解明出来れば後の研究に大きく役立つと考えられており、上記の事項と共に推奨されている。
追記
『統一言語内径』及び『バベル』と云う呼称は、全生物へ通じる言語である統一言語を用いるC-2720-nightの生息域である事や、彼等との意思疎通によって得られた、バベルは重力の反転した空間であると云う情報に由来する。
C-2720-night曰く、バベルは彼等が作り出した空間であり、更には『人間の研究の為に造られた』と云う。
天高く造られ、結果的に崩壊したとされるバベルの塔をパロディし、重力を反転させた孔に空間を作り上げる事で、神ではなく人間を研究している事や、同じ轍は踏まないと云う意思表示をしているのだと。
恐ろしい話だ。
これではどちらが研究対象か、解ったものではない。
深淵を覗く時、深淵もまたこちらを覗いているのだとは、ニーチェの言葉だったか。
鏡を思わせる彼等の行動原理を考えると、純粋な好奇心による物なのだろうが、端的に云ってしまえば、彼等は『過去の人間を研究する後世の人間』の様な物だ。
我々の言動を模倣し、技術を模倣し、知識を得て、それを批評する。
それは正しく研究者の態度であり、それ故に我々はその行動に対して恐怖を覚えている。
彼等は今現在、人間の言動を模倣している『だけ』だ。
研究者同士の情報共有とでも話を結んでしまえば耳触りは良いだろうが、好奇心と云う物はそれ単体で継続はしない物である事を考えると、彼等もいつかは我々に『飽きる』時が来る。
その時、我々に対して彼等がどの様な態度を取るかによって、我々の未来は左右されると云っても過言ではないのかも知れない。
遊び終わった後、そのまま放置するのならば、それで良し。
だが、彼等が遊び終わった後、しっかりと『片付け』をする事を学んでいるとしたら?
そう仮定するだけで、恐ろしい未来が想像されてしまう。
バベルの塔をこの空間のモチーフとして置き、且つそれをメタファーする事を学習していると云う事は、人間の信仰と情熱だけでなく、悪意と失墜をも学んでいると云う事なのだから。
今現在出来る事は、彼等にとって有意義な情報を提供し続ける事で彼等の好奇心を刺激し続ける事と、いつか彼等が我々への好奇心を失った時までに、人間の怠惰を学習し取り入れている事を祈る事だけだろう。
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