I─0007─DAWN─PH
ネトリBSS亜種
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担当研究員へ通達
定期的にI─0007─DAWN─PH問題を議題とする会合を設け、必要に応じてレポートの改稿を行なってください。
また、同生物群によるサイバー攻撃が発生し、当該レポートの内容が致命的に改竄・破棄された際のためにバックアップを常に用意しておいてください。
そして最後に、いつ如何なる時でもNTRを許さないでください。
──支部長ファントム・ダウン


名称
通称
ボクガサキニスキダッタノニネトリ
↳補遺
余りにもその通称が長すぎるため、通常は“ネトリBSS”と短縮されます。
なお、本種の雌個体は“ネトリWSS”と呼称されますが、雌雄の比率が9︰1で雄の方が多いため、種名として用いられることはありません。
学名
Adulteravis netori dolosus
分類
基本的四分類


異次元生物+超擬態生物
Hybrid規定運用中*¹
*¹
FOOTNOTE︰Hybrid規定とは、当支部において用いられる、基本的四分類において不可視性が重複する生物種を対象とする際のルールの1つ。最も割合の大きいとされる不可視性を、その生物種の主要な不可視性として表す。
生物学的分類
| 項目 | 概要 |
|---|---|
| 界 | 動物界 |
| 亜門 | 異次元亜門 |
| 門 | 脊椎動物門 |
| 綱 | 鳥綱 |
| 目 | カッコウ目 |
| 科 | カッコウ科 |
| 属 | ネトリ属 |
| 種 | ネトリBSS亜種 |
危険度

| 項目 | LEVEL |
|---|---|
| 直接加害性 | LEVEL1 |
| 間接加害性 | LEVEL7 |
| 多種敵対性 | LEVEL9 |
| 汚染媒介性 | LEVEL3 |
| 知的思考性 | LEVEL8 |
| 群発繁殖性 | LEVEL5 |
| 対応困難性 | LEVEL7 |
| 環境適応性 | LEVEL4 |
総合危険度
XXX
系統発生
本種は、C─0006─DAWN/ネトリを原種として発生した亜種です。
近年における駆除運動が個体数削減という形の選択圧となり、より新たな利己的な遺伝子拡散のための進化を行ったと示唆されます。より単純かつ起源的な生態に回帰したとされます。
詳細は生態を参照してください。
特徴
外的形質
カッコウ(Cuculus canorus)に類似した表現型を示しますが、羽毛は漆黒色をベースとして赤色のラインが特徴的です。
また、若干の体躯の矮化が見受けられます。
人間状態においては擬態元とする対象の外的特徴を概ね完全に模倣するため、一律した目印は確認できません。
↳備考
矮化は、人間から捕獲されるリスクを困難なものにするための進化と推測されています。
内的形質
羽に異次元素の影響を抑える成分が含まれており、これが表皮を保護する役割を果たしています。
↳備考
後述する生息圏の変遷に伴い、短期間で獲得した形質であると思われます。
本種は肉体構造の顕著な変質を生態の一部に組み込んでいるため、そのような進化も短期間で行えると考えられています。
生態
分布
大規模生息域 幻世域において大規模に生息しており、そこから日本国内に播種しています。
海外への流出は2026年時点で確認されていません。(補遺#2を参照)
人間による駆除リスクを減らすために、独自の生態学的地位を築き、大規模な営巣を行っています。
適正環境
極端に過酷な環境ではなければ、どのような領域でも生息に支障はありません。
しかしながら、大自然で一生を終えることは基本的に有り得ず、常に人口密集地にアクセスできる環境に定着します。
成長
| 発育的成長段階 | 期間 |
|---|---|
| 胎児 | 約10ヶ月 |
| 嬰児(第一次人期) | 約10年 |
| 第一次鳥期 | 約2週間 |
| 成体(第二次人期) | 約10年 |
| 老衰期(第二次鳥期) | 約3週間 |
本種は生涯において人間とカッコウ(Cuculus canorus)の二通りの姿を適材的に用います。
変身は原種と同じく体細胞を非条理なメカニズムにより変質させ、擬態元とする人物の外見を概ね完全に模倣する形で行われます。
食性
鳥期ならば様々な無気配性植物や芋虫を捕食しますが、人期ならば発育的成長段階に合わせた雑食性を示します。
特殊な繁殖行動
本種は第一次鳥期において異性の人間を品騭して、自らの好みに合致する個体を番のターゲットにします。
この際、その対象人物に選ばれる条件として“集団において顕著に一方的な恋愛感情を向けられていながら、誰とも恋愛関係を築いていないこと”が大前提とされます。
その後、ターゲットを隈無く観察した末に、その性癖やタイプとする人物像を予測して人型に変身します。
この手段は、原種による既存の“既に恋愛関係が密接なパートナーの片割れをターゲットにして不倫させる”という方式よりも、浮気騒動に発展して自らの擬態が暴かれる蓋然性を下げることに貢献しています。
また、同時にそれにより周囲の人間が抱く“憧れの人物を奪われた”という様相を見て、本種は愉悦の感情を抱きます。
過去の実験においては、そういった“片思いの対象を奪われた人物”のことを“土俵にすら立てなかった敗北者”と言い呼ばわり、嘲笑している記録も残されています。
その後に、人身掌握の話術を用いてターゲットと恋愛関係を構築した本種は、原種と類似した特殊な繁殖行動を行います。下図はその例です。


強制的な託児行為とも呼べるこれは、最終的に人としての全責任を放棄する逐電という段階を経て完遂されます。
出産された幼体は総じてカービー型擬態*¹を用いて、発育段階において継続的なNTR行動*²により仮親に対して離反的な態度を行います。
また、それが悪化した場合は幼体が仮親に傷害を加えたり、成熟していた場合は殺害するケースもあります。
やがて、幼体は10年ほど掛けて成長した後に、突如として仮親から離れて第一次鳥期に移行します。
*²
FOOTNOTE︰カービー型擬態とは、托卵を行う鳥類がその卵を仮親の卵に酷似させる擬態を指す。しかしながら、本種においては繁殖形態が卵生ではなく胎生であるため、通常のニュアンスとは外れるが、便宜的にカービー型擬態に区分している。
*³
FOOTNOTE︰Nesting Territory Replacementの略。ある生物種が労働寄生する宿主のテリトリーを自身にとって優位な縄張りにすること。具体例として、相利共生が行える他種の誘致などが挙げられる。
老衰
繁殖行動を数回繰り返した後に、本種は故郷となる営巣帯に帰還して比較的穏やかな余生を過ごします。
また、この際に若い個体に対して効率的な繁殖の手段を継承していることも判明しているため、第二次鳥期の個体は第一次鳥期の個体よりも駆除を優先しなければなりません。
特殊能力
異次元への遷行能力は持ちませんが、ポータルの移動に際して負的影響を受けません。
初発見
本種は、原種よりもより狡猾で証拠隠滅に長けているため、その発生から数年は認知さえされていませんでした。
しかしながら、各地のフィールドエージェントから報告される細かな事案録から特定の法則性と規則性が見出されました。
その後、当支部の調査部門による捜査が行なわれ、ターゲットとなる女性に声を掛けている本種個体が初めて発見され、その場で確保されました。
捕獲方法
俗的なBSSが発生している領域において、本種は高確率で見つけられます。
しかしながら、その段階で捕獲を試みることは推奨されません。
人間状態のネトリ科に口説かれている人物を見かけたら、それを遮二無二に引き離そうとするのは賢明ではないでしょう。
無闇に手を出せば、奴等は狡猾ですから、周りの人間を味方につけて煙に巻かれるだけです。
そうして、貴方はコミュニティのブラックリストに入れられ、報復として家族が狙われるかもしれません。
そういった際には専門の機関に通報することが肝要です。
『知っておこう!ネトリ被害特別対策マニュアル』より抜粋。
そのため、確実に正体が本種であると断言できるような証拠を集めてから、捕獲を実行してください。
補遺#1
当支部では、本種による各地での継続的な被害を縮小させるために駆除計画が進行されていました。
しかしながら、その開始から三ヶ月後に以下のようなメッセージが当支部宛に送付されました。

これに伴い、駆除計画は一時中断を余儀なくされました。計画は再稼働しています。
発信源は、ネット上において存在しない団体名義で告発を行なっていた本種であることが判明しました。
現在も同様の手口により各所から抗議文が送付されており、法的措置もとられていますが、当支部の法務課が対応しています。
また、他機関にもこのような文書が送付された場合には、駆除計画を主導する当支部が代行して処理を行ないます。
補遺#2
以下は、当支部の研究部長が記録した文書です。
形式︰インタビュー
場所︰東雲支部第六収容房
日付︰2026.▓.▓▓
実施者︰トワイライト研究部長
対象︰拘束中のI─0007─DAWN─PH個体。BSS.49*⁴の囚虜識別番号が与えられている。
目的︰I─0007─DAWN─PHに対する非暴力的な審問。
付記︰対象はP-0002/モルメの怪力によっても理論上は破壊されないような収容房の中に閉じ込められています。
[開始]
トワイライト研究部長︰BSS.49。これからインタビューを開始するが、気分はどうだ?
BSS.49︰……全くもって最悪だよ。
……なぁ、頼むからさっさとここから出してくれよ……
トワイライト研究部長︰再三言うが、それは無理な話だ。
これまで君が犯した所業を振り返ってみれば、至当の結果と言わざるを得ない。
……君のこれからの仕事は、我々に対して一切の情報を嘘偽りなく明かすことだ。
BSS.49︰(舌打ち)……クソッ、こんなことして仲間がタダで済ますと思うなよ。
トワイライト研究部長︰好きなだけ言っておきたまえ。
……しかし当然、我々としても痛めつけるのはモラルに反する……君のような種族でも、生物学的には人間と大差ないからね。
だから、自白薬を使わせて貰う。
BSS.49︰……自白薬だと?
トワイライト研究部長︰あぁ、ウチ特製の劇物だよ。
P─0007/キチッパーやP-0006-hamy-GTS / ドパガキエモウスイの毒素を筆頭とした、判断力を低下させる合法ギリギリの成分で調合されている。
BSS.49︰(戦慄)……なっ!?
トワイライト研究部長︰コイツは揮発化させても効果があるからな。お前に吸い込んでもらえば尋問もすぐ終わる。(白銀の液体が満ちたペットボトルを取り出す)
BSS.49︰……冗談だろ?……おい、やめろ!そんなもので秘密を漏らしたら私が──
トワイライト研究部長︰口封じにお仲間に殺されるのかね?それなら我々の手間が減って万々歳だが……
BSS.49︰やめろ!おい!!やめてくれ──
[収容房に揮発化させた自白薬を充満させる]
BSS.49︰あぁぁぁぁぁぁあ!!!(発狂しながらも、明確に意識レベルを低下させる)
トワイライト研究部長︰うむ、重畳。流石に一番強いタイプのものを使った甲斐がある。
……では、BSS.49。これから私からの質問に嘘偽りなく答えるんだ。いいね?
BSS.49︰……(首肯)
トワイライト研究部長︰では一つ目だ。君のお仲間の屯場は何処にある?
BSS.49︰(虚ろに)……紫色の……霧のある……森……人間は……げんせいきと呼ぶところ……
トワイライト研究部長︰へぇ……幻世域ね……面倒だな。それは奥地か?
BSS.49︰(首肯)
トワイライト研究部長︰オーケー……では次だ。お前達は何故、この国にしか生息しない?
海外にでも逃げれば、我々の駆除範囲からも逃れられたのに、何故異次元を選ぶんだ?
BSS.49︰……治安が良くて……子供が死ににくいから……
……なにもしなくても……子供が……成長できる……教育だって──
〈記録終了〉
*⁴
FOOTNOTE︰Body-Seized Servantの略。当支部では完全に拘束された人型の収容者を指す。それぞれに囚虜番号が振り当てられる。
このインタビューにより、本種が日本固有種である要因が“世界的に医療制度や育児支援制度が充実しているから”であるということが判明しました。
現在、当支部では国内で出生する嬰児がネトリ科であるか否かを判別する装置を開発中ですが、余りにも擬態精度が高いため難航しています。
何たる皮肉だ。
我々が未来を育もうとしていた努力は、都合よく利用されていたのだ。
このままでは、何れこの国はネトリ科に乗っ取られてしまうだろう……
早急に対策が必要だ。
他支部にも従来以上の連携を要請する必要がある。
近いうちに、幻世域にある奴儕のコロニーを叩かねばなるまい……
ところで、最近は収容中のネトリBSSが尽く行方不明になってるようだ。
不思議なことに、その全員が審問で使われた薬剤でパッパラパーになっていた個体らしいが……
──トワイライト研究部長
全身から片喰支部のC-0021-fanbi / クソゲリエナドリモドキを吹き出してる個体もいましたが、依然としてその原因は謎です。
謎です。
──オーロ調査部長
この前、収容房の中でHAGOROMO支部(旧母衣支部)の白狐狸に食い殺されていたネトリBSS亜種を発見しました。
今でもそこに住み着いています。
また、不思議なことに、現場には中身が空っぽの大量の緑の瓶が転がっていました。
なんででしょうか……?
──支部長ファントム・ダウン
不可視生物生態研究室︰東雲支部
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