リカツロン 危険度:XXX
当生物の報告、登録に当たり、一部「生物」というものの定義について議論が発生しました。代謝の有無、自己保存及び複製、そして膜による外と内の区別。当生物は確かに生物的行動を見せ、捕食排泄を行いますが、三番目の定義に不足が発生しています。そのため
そこで我々Cは、ある定義をこの生物に対し仮的に施行しました。その定義とは、「死ねるか死ねないか、もしくは殺せるか殺せないか」です。
【外見】
我々が目にする場合、大抵は数字として現れます。計算上、当生物は大量の数字から構成される龍のような姿形をしています。また、どこかしらで別個体と絡まっていることがあります。
【生態】
現在計算機越しに観察することができます。端的に言ってしまえば、当生物は「確率」そのものに擬態しており、その上我々の回りに多く生息しているでしょう。
ただし全ての「確率」がリカツロンというわけではありません。「確率」が生まれるごとに、およそ0.0003パーセントでリカツロンが生まれる可能性が生じ、その確率を掻い潜って誕生するのが当生物です。誕生したリカツロンは、自身が担当する「確率」についてある程度知識を有しているかのように振る舞い、活動を開始します。
リカツロンは自身が担当している「確率」についてある程度操作ができるようです。例えば「██県██市の███山で30代男性が転倒する確率」に擬態している個体は、雨や雪の多い時期になるとその「確率」を大きく上昇させ、「日本人戦争経験者が午後八時三十六分にくしゃみをする確率」に擬態している個体は、八月六日等の一部日時において低下させていたりします。リカツロンの捕食対象が主に「ヒトの幸不幸」であるため、リカツロンの性格は善悪で比較的綺麗に分かれている印象です。
また上記からも察せられる通り、当生物には一定の知性が存在しています。正確な値は不明ですが、我々と意志疎通が図れます。
ある個体から聞いた話によると、リカツロン同士は非常に仲が悪く、興味も示さないようです。
【発見経緯】
当生物は、弊支部内で双六が爆発的に流行した際に作成されたソフト、「デジタルサイコロ」のテスト中に発見されました。当初当該ソフトには「特定の女性が使用した場合にのみ4の出目が非常に多くなる」というバグが発生していました。弊支部内組織「天体開発」1がこの修理を試みるもコードに一切の綻びが見つからず断念、内組織「天文隊」2による捜索の結果、何らかの知性により作用される確率の変動を確認したのが、当生物発見のきっかけです。
【殺害方法】
リカツロンの殺害は、それすなわちその個体が擬態している先の事象を0パーセントとすることであり、殺害実験は成功しました。しかしこの技術は支部長判断により機密情報に指定され、支部長を含むリカツロン殺害実験に関与した全ての研究員の記憶が消去されました。確かにリカツロンの殺害は非常に有益且つ、便利なものでした。当実験では「████年█月における牛の屁が原因の災害発生確率」に擬態していた個体を殺害した結果、将来的な地球温暖化進行をほんの少しだけ止めることができたようにシミュレートされました。
しかし結果として、当個体に絡み付いていた「█月に██████が取り扱う荷物のうち███国へ向けられたものである確率」に擬態していた個体も死亡してしまいました。つまり、一個体の殺害は他個体の連鎖的な死に繋がります。そのため当技術の公開により致命的な事象の確率が0となる可能性があり、人類、ないしは宇宙の滅亡に繋がる虞があります。
もし何らかの方法で「死の確率」に擬態、殺害できたなら、我々は不死となることができるでしょう。「死ねるか死ねないか、もしくは殺せるか殺せないか」という定義に反し、生物でなくなろうとも良いのであれば。
【議論】
当生物は特異的な定義による登録、(他の不可視生物より)進化論から逸脱した生態から、当生物を「生物」という枠組みとして良いのかという議論は今後も続くでしょう。
「生物」とされるか「神」とされるか、はたまた別の「ナニか」に分類されるかは、どれも同確率であるゆえに、現段階では断言できません。
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