まさかその日、技術部門の汎用アーティファクト開発課に突入命令が下されるとは思いもしなかった。
ご丁寧にガサ状まで用意され、総轄部門がいかに怒り心頭であるかが分かるような具合である。
やがて、少なくとも午前6時からの作戦開始から正午を回るまでに作業室から数ダース単位で“例のブツ”が回収された。
また、その開発を主導したり勝手に販売していたエージェント達は譴責と減給処分を食らうことになった。
私含めて。
「で?なんであんなもの作ったんだ技術部長?」
──いやその、本当にごめんなさい。
──ただね?ほらアレだよ。折角ネトリ科のサンプルが届くから有効活用しようと思っただけなんだよ。
──でもね?徹夜でみんなノリにノっちゃってね?気付いたらあんな呪物が出来てただけなんだよ。
「……バカなのか?」
──純粋に理解に苦しむような目やめてね。
──でも、技術者って大抵こんなもんだから!気になったら作っちゃう性分なんだよ!
「百歩譲って実験用に作るのはいいとして、それを報連相もせずに勝手に販売ってどういう了見なんだ?」
──グゥの音も出ねぇや!
──で、でも発注されたりしてないからギリギリ免罪の余地とか……?
「お前どうせ注文届いてたらノリノリで配達してただろ」
──……そんなことする訳ないだろ!
──支部長は一体私をなんだと思ってるんだ!?
「……まぁ、幸いにも未然事案として対処できた上にそれなりの結果資料も作っていたと聞いてはいるが」
──そうだろうそうだろう。これでも結果を纏めてちゃんと上納する予定だったんだよ。
「私からしてみれば『どうせ開発命令を申請したら却下されるだろうから、面白半分で先に製造して、良い感じの利益を出せたら公表しよう』とかいう煩瑣な隠匿に見えたがね」
──なんで分かるんだよ!?
「中央管轄室に耳の届かない場所はない。……ところで反省文の量は2000枚くらいでいいかな?」
──おいおい嘘だろそんなの死んじまうよ。
「取り敢えず今から腱鞘炎になるまで精一杯励むことだ。眠くなったら枕は大量に使わせてやろうじゃないか」
この後の私が、案の定壮絶な地獄を見たことは言うまでもない。
不可視生物生態研究室︰東雲支部
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