P-0006-poliknown:クラスネコトノハ

名称: クラスネコトノハ

分類: 無気配生物

危険度: X

分布: クラースネー川流域/エリゼ島

付記: エリゼ島の調査困難性から、島内の不可視生物に関する研究は主にレースィル山頂の研究所から不定期に送付される書簡に半ば依存しています。以下にクラスネコトノハに関する内容を含む書簡からの抜粋を示します。


エリゼ島からの手紙/3通目

(前略)
この島の研究所の立ち上げもほとんど終わりました。前回の手紙はどうやら届かなかったようですね。エリゼキュウショウガラスを伝書鳥として運用するのはいいアイデアでしたが、彼らがルートに慣れていないとはぐれてしまうのはなかなか大変なものです。

さて、今回の手紙では研究所周辺、つまりレースィル山の山頂付近に生息する不可視生物について報告させていただきます。特に、仲間の植物学者が研究を始めた無気配植物たち…島に茂って島そのものを無気配化させている植物たちの一端についてもお話しできそうです。

山頂からは島唯一の水源にして大西洋へ繋がるクラースネー川が流れ出ています。この川の流域には、我々が”クラスネコトノハ”(和名)と名付けた花が咲いています。彼らは湿った日当たりのよい場所を好むようで、川からしばらく離れてしまうとめっきりその姿を見かけなくなってしまうのです。ただ、海岸沿いの河口周辺にはクラスネコトノハの花畑が生まれていたらしいです。ちょうど今が開花の時期なのでしょうか、この光景を見れるのも今だけだぞと無気配視認特性を持つ友人が連れ出したり摘んだりしては見せてくれるのですが、私にはどうもよく分かりません。

彼らによれば、クラスネコトノハは最大でも全高20cmほどの小さな植物で、赤、青、黄色に色づく2cmほどの小さな花を先端に付けるそうです。自重でややしなった茎からは長い葉がまばらに生えており、それを支える根はおよそ15cmほどの長さを持つそうです。研究所横の何本かは弱っているようで茎が大きくしなり、花が地面についてしまっている様子も見られました。
(後略)

エリゼ島からの手紙/9通目

夏真っ盛りのこの頃ですが、お元気でしょうか。島は緑に色めき立っていて、からっとした良い天気です。

以前より観察していたクラスネコトノハですが、先日種子を採取出来ました。次の連絡船でお送りします。(カラス便に任せてもよかったのですが、途中で落とされて外来種になってしまっても困りますから。)川沿いに咲いていた花々はエリゼヨカクレチョウによって受粉し、クラースネー川の流れで種子を散布するようです。だから川に沿うようにして生い茂っていたんですね。

クラスネコトノハの種子といえば、少し興味深いことが分かりました。我々は、普通の花は種子を下流に流した後に枯れてしまうため年々彼らの生息域が狭まってくのではないか、そうでないなら何か川沿いに咲き続けるための仕組みがあるのではないかと予想していたのですが、この問題が解決されました。どうやら研究所の横、クラースネー川の水源地の周りに咲いているクラスネコトノハは何年も枯れることがなく、毎年咲いては種子を下流に流しているようなのです。そして枯れる年になると茎が弱って花が地面に近づき、その地点に種を落として次代に繋ぐのです。今年は3本ほどが枯れました。

つまりクラスネコトノハは、クラースネー川の水源地に何年も枯れることのないものがあって、そこから種が流れていく。そしてその花が枯れる時には茎がしなって花を地面につけ、種子を川に流さずに自身の近くに次代を残すという生態を持っていたのです。何故水源地のものだけがそのような性質を持つのかに関しては、今後何年かかけて研究していくつもりです。次の報告をお楽しみに。
(後略)

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