『重大インシデント:absorption-existance』最終報告書

『重大インシデント:absorption-existance』最終報告書 

2021/9/7 21:00 ██研究員が接近禁止命令を破り榮支部施設跡地へ接近。再建された建物へ接触・侵入した。

おおよそ20分後に突入した特殊作戦部隊により身柄が拘束される。

その際建物内部では活性化し、活動中の[ae-β]、[ae-γ]、[ae-δ]が確認され、██研究員とコミュニケーションを取っていた。

██研究員は処分が決定するまで彼らに攻撃的な態度を取らないことを条件に自身の拘束を快諾した。

以下は拘束された██研究員へのインタビューである。

一部グロテスクな供述もある為、閲覧に注意すること。

 [インタビュー者:████支部 研究員 (Aと記載する)
  応答者    :旧榮支部研究員 ██ (拘束状態)
  他、本部研究員二名、███支部 特殊作戦部隊員三名が立ち会う ]


██ :[拘束後から沈黙を貫く]

A  :……ご自身が何をしたか、お分かりですか。

██ :…………そこまで判断が付かないわけじゃない。

A  :ではなぜ接触が禁止されていた旧榮支部の施設群に接近したのですか。

██ :……夢で、呼ばれたんだ。『未提出の報告書の草案があるから読んでくれ』って……が、俺を呼んでいたんだ。

A  :それで、接触したと?

██ :夢だっては分かってたとも。でも建物は元通りになっていたし、あの三人とはいつも通り過ごした。██ちゃんは報告書の処理で慌ただしかったし、██くんは取って来たデータの精度が合わなくて眉間に皺を寄せていたし、はコーヒー片手に俺と話した。……本当に、いつも通りで。

A  :何を話したのですか。

██ :……いつも通りの会話だよ。強いて言えば無断欠勤をちょっと詰められたくらいだ。

A  :時間が経過した認識があったと?

██ :しっかりと、ね。


[Aが立会人の本部研究員と会話のため一時離席]


A  :――お待たせしました。他にも質問はいいでしょうか。

██ :……ああ。

A  :あなたが施設に侵入した際、何か違和感のようなものはありましたか。また、研究員たちはどのような反応を示していたか。

██ :違和感……はっきり言って無いな。俺目線でもあの建造物はよく出来ている。三人は俺が初めてあった時は寝ていたな。慌てて目を覚ましてコーヒーやらなにやらを……。[唐突に口をつむぐ]

A  :どうしましたか。

██ :……建物については分からんが、三人は、説明が付けられるかもしれない。

A  :教えてください。


[一呼吸置く]


██ :俺が、あそこに居た三体をたちだと認識したから、あの三体はたちとしてふるまうようになった。……と今考えた。

A  :どういうことですか。

██ :……元は多分、似ているだけの生物だった。でも、俺が「そう」だと定義づけてしまったから、「その様」にふるまうようになった。不可視生物ってそういうもんだろ。表皮に触れるだけで脳内物質をエネルギーとして利用するとか、認識を食うとか。

██ :[嗚咽交じりに] が生きていると、俺が……思ってしまった。生きていてほしいと。あの光景はただの夢だったと。鉄筋が刺さったままの██ちゃんも、胴が千切れた██くんだって。……頭が半分潰れたも、全部。無かったことにしたいと。俺が……おれの所為……。

A  :まだ、そうと決まったわけでは……。

██ :[声を荒げて] いいや、そうさ!じゃなきゃ俺を呼ぶ意味が無い!不可視『生物』だろう!?どこかしらで何かを利用しなきゃあいつらだって生きていけないから俺を利用したんだ!

A  :██さん、落ち着いてください。

██ :……だったら、こっちも利用してやろうっても、考えたわけだ。

A  :……?

██ :アンタはそもそも俺が何で榮支部に割り当てられたか知っているか?

A  :いえ……。

██ :不可視生物から影響を受け、生活に支障が出るようになってしまった一般市民の精神的治癒が目的……。つまりは精神鑑定と前向きな洗脳が俺の本来の専門だ。まあ、榮支部でもぐらいしか知らないし、アンタが知らなくても無理はない。

██ :もちろんまずはあいつらの研究を進めなきゃならない。どこまで共生関係が成り立つのか。俺が死んだら対象を乗り換えるのか。そもそもあいつらが俺にリターンをよこす気はあるのか……そういったものも含めて研究する。

██ :もし本当に俺の認識であいつらが成り立っているなら……俺の認識次第で恒久的な研究員を創れるかもしれない。俺自身にあいつらは不死であるという認識を植え、書き換わらないよう保護をかける。そうすれば……。

A  :それは、あなたが彼らと共に居たいから立てた予想ではないのですか。

██ :……そうだよ。でも、アイツ等は居るんだよ……。この目で見ちまったから、認識しちまったから……。

A  :本部が、それを許すとお思いですか。

██ :……分からない。もう、どうすればいいのか、判断がつかないんだ……。


[これ以上のインタビューは不可能と判断され打ち切りとなった]

2021/9/10 本部からの通達

本日より『不可視生物生態研究室 サカエ支部』を創設することを決定した。

主な目的は C-0001-sakae に指定された不可視生物群 榮群体の継続的な監視・調査・報告。

サカエ支部の施設や所属する一部の研究員たちが不可視生物であることは最高クラスの機密事項とし、一部の研究員や支部長を除いたすべての関係者に記憶改ざんを実施。報告書の閲覧も許可制とした。

環境が整い次第、他支部と同様に不可視生物の調査・研究を行う研究機関としての役割を担うものとする。

段階を踏んで他支部と同等の権能を許可する方針であるが、特殊作戦部隊に関してはしばらくの間認可が下りる事は無いとの見通しである。

C-0001-sakae の研究が十分だと判断された暁には『特殊プロトコル:永日なる榮』を実施。サカエ支部の永続化に向けた実験を開始する予定としている。

 

これはチャンスじゃない。償いだ。

互いに利用し合うために姿形を模され、恒久的に研究から離れられなくなり、未来を奪われた彼らへの償いだ。

俺も全てを捧げる覚悟はできているから、どうか最期まで赦さないで。

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