以下は監視カメラ等から書き起こしたある日の記録です。支部長は現在過疲労治療中であるため、内葉美恵氏による代筆が行われています。
2026年07月30日20:01
星覧支部
大投稿祭が発表された。支部長は勿論、各内部組織員も皆注目した出来事であり、実際に約九十パーセントもの支部員が発表動画を視聴(共通のアカウントのため、視聴数は1です)していた。
21:38
説明ライブ視聴中、第三研究棟一○六号室にて研究していた████研究員が一つ言葉を溢した。
「……ところで、私たちはどっちに入るんですかね」
もし無気配生物の研究棟であれば無気配が、異次元であれば異次元が返答とされていただろう。しかしながら、第三棟は完全透過性生物研究棟である。それすなわちどちらのチームに重荷が乗せられることがなく、天秤は水平を保つ。当然明確な答えなどでるはずもなく、居合わせた█████研究員は以下のように答えた。
「さあ……? 支部長に聞いてみればわかるんじゃない?」
「あ〜、まぁ支部長から通達来るまで待機で良いかなぁ。荒波味噌汁のむ? 生きてるワウショ使ってるから気をつけなきゃだけど」
「ありがとう〜、飲む」
21:53
研究者は良くも悪くも、どこかしらで変わっている。自身が研究している事柄に対し絶大な愛着や執着を有している(必ずしもそういうわけではないが)。解かれることのない言語は病原体のように転々と感染り感染って、やがて大規模に広がりつつある。第三、もしくは必然的に様々な箇所が発端となって始まったパンデミックは第一、第二研究棟へと辿りつくと、免疫系等に打ちのめされることなく細胞へと感染してしまった。曰く、
「シヴァーヤあるし異次元でしょ」
曰く、
「初報告スワラクルだし無気配じゃない?」
この双方は、両研究棟にて同時多発的に発生した。悲しいかな、こういった対立というものは自身のライバルに優位な情報も思い浮かんでしまうもので。特に第二研究棟は、自分達が証拠としている事柄が、確かに特別であるが初という事象に若干負け得ると自負していた。
第一から文書保管室へ大量に、第二ではお茶が入れられた。
22:08 支部長室
支部長がライブ配信を見ている最中、部屋の扉が開いた。誰かと思い視線を向けるも、そこには誰もいないように見え、外の暴風雨もあって風で開いたのかと、支部長は推測し、椅子へと戻った。そんな時であった。突如として背後から首元にナイフを突きつけられ、背後から声が浴びせられる。
「ごめ……ごめんなさい…………わた、私のせいじゃ……ないんです……頼まれて…………」
その声の主は、内葉美恵だ。その無気配性を利用されているのだ。支部長は大人しく両手を挙げると、小さく笑って思考を回す。
「……そちらの望みは十中八九大規模関連だよな? 察するに、無気配研究棟の奴らか。大変だねぇ」
「わ、分かってるなら……早く……」
「……だが残念」
支部長の真横に異次元穴が開き、穴の中からの手支部長を椅子ごと引き寄せられてしまった。この際ナイフが少しだけ、ほんの少しだけあたり、支部長の首からは少量の血が出ていた。
??:?? 異次元内(支部長による証言を元に執筆)
異次元に連れられて、まず最初に視界を埋めたのは麻酔銃口。十もの射出口に囲まれてしまえば、例え生かすための武器であっても命の目覚めは来なかろう。相変わらず、手を下げることはできない。
「一日二回の命の危機とはねぇ。そんで、君たちの願いも自身らへの肩入れとかだろう? 大投稿祭の」
先頭だって支部長へ銃口を向けている人物……███研究班長は静かに頷く。そして、支部長は頭を抱えた。詰みだと。どちらかを選んだ時点で、首を解剖されるか、ヤク漬けになるか。どちらみち地獄だろう。
しかしここで脳死するほど本能は死んでなどいない。どうにか逃れる道はないかと、必死に必死に必死にルート検索をして模索をして検索をして、を繰り返し尽くす。死んでおいても大規模生息域「あの世」の調査もできるし構わないかと一瞬考えこそしたが、色々と緊急システムが働く面倒を考え破棄した。
そして、一つの考えが電流として脳内を駆け巡った。
「……ちょーと、発表することできたから解放してくれ……所属チームについてだ」
24:43 支部長室
様々と原稿をまとめ、放送準備を整え、支部長は椅子に座る。そして息を軽く一つ吸って、目の前に添えられたボタンを押すと、お馴染みの開始音が発されて、声が広がる。
「えーテステス。聞こえてるかな皆。こちら支部長星柿。まぁこうして放送しているのは他でもない、大投稿についてだ。完全透過と超擬態班はあんま気にしていないとは思うけど、まぁ無気配と異次元班は張り切っていてね。危うく新支部長選挙が開催されるところだったが。与太話はさておき……気になっているであろう所属チームについて発表する。えー、もしここで私がどちらかを表明したら、その瞬間立候補→選挙が開始するだろう。だから私はこうする。
八月十四日時点で押されているチームに参加する。
まぁある種ギミックみたいなものだ。救世主とかを名乗るつもりではないが、助っ人ギミック的立ち回りが面白そうだろう。勿論前半をボイコットするつもりもない。投稿する記事に両方のタグを付け、単純な得点源を徹するつもりである。ただし異次元と無気配報告時に限り、対応チームのタグのみを付けさせてもらう。
きそうな疑問でも解決しておこうか。何故十五でなく十四なのか。まぁそれは私の事情だ。少々戦場にな…………ふむ、案外質問が思いつかないな。まぁ良い。もし質問ある奴は各自支部長室まで来るように。書かれるであろう記録を呼ぶ方々も是非。以上星覧支部支部長星柿からの発表とする。各自キリのいいところまで研究し、休眠したり帰宅するように」
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